研究報告
 

H22.3.25 NPO 法人 日本皮革技術協会

平成 21 年度 国庫 補助金 利用講習会の報告

「革・革製品に関する技術講習会」の総括

 

 東京(写真1)で H22 年2月 16 〜 17 日2日間、及び横浜(写真2)で2月 23 〜 24 日2日間、計4日間にわたり、革・革製品に関する技術講習会を開催した。新たに企画した実験中心の少人数による講義方法を加え、好評を博した。有用な人材を育成していくためにご覧いただき、ご意見などいただければ幸いである。図表などは受講者アンケート・質疑・聞き取り調査などを解析してまとめた。

 なお、講習会内容については、下記のC項に略記した。詳しくは、当会のホームページ( http://www.hikaku-kyo.org/htdoc/kousyuu-201000216-23.html )を参照願いたい。

 

@ 受講者の特徴

1) 受講者の業種割合は?

 

 受講者の業種 ( 図1 ) を6分類すると、最大の業種は製造・加工 33 %、ついで小売( 百

貨店・スーパー・ 専門店・ 通販・小売・注文小売 ) 24 %、 卸・商社 ( 革商、製品卸、ブランド品小売、輸入販売店 )15 %、 検査機関・団体・公共・専門学校 14% 、 アパレル・デザイン 12 %、手入(薬品・修理) 2 %の順であった。なお、図で示す割合は全体を 100 とした(以下同じである)。

 アパレル・デザイン業種を製造・卸に分類すると、 製造加工・卸:小売 の関係は、 60 %: 24 % となる。最近は、輸入・ブランド商品、通販・注文小売、検査機関、アパレルなどからの参加が増える傾向にある。その根拠としては、革製品の多くは海外生産や輸入に頼るようになり、品質管理や検査の必要性が増えたことにあり、国内生産分野では、ファッションセンスがあり、使い易く、安全・環境配慮型の製品に転換が進んだ企業の参加が見られる。輸入製品や環境配慮型製品では、品質管理・検査が必須条件となり、検査・試験分野の受講者が毎年伸びている。一方、小売の代表である百貨店やスーパー(全体の 5 %未満)の参加者は、このところ激減傾向である。これも販売形態の分散化、例えば、ネット販売・通販の拡大や注文販売などが増え、専門店以外の販売者の参加が目立つ結果と考える。

 

2) 受講者の職種割合は?

 受講者の職種(図2)を見ると、最大の職種は 試験・検査・品質管理が 43 %、ついで開発企画・研究・技術及び営業・販売が同率の 25% 、 教育・指導 が 7 %であった。図1の業種では、 検査機関(団体・公共を含む)は第4位であったにも係わらず職種では第1位を示した。このことは図1で既述したように業種全般において検査・品質管理部門の設置が急がれたことが大きい。その点では、人材構成は 10 年前と比べ人かなり変わったと想定される。

 

 図2に示すように検査・品質管理及び開発・研究・技術の両職種を合わせると、 約 70 %を占めた。過去の講習会においてこれだけ同種に近い職種が集まったのも珍しい。その理由としては、今回の体感講習会では、実験を主体とした講義内容を行ったためにこれらの専門職種が集結したものと考えられる。その上に、 教育・指導分野の 専門学校、国・公共機関の参加もあり、これらを加えると実に全体の 75 %が技術系専門職を占めたことになる。このように純然たる営業・販売分野の参加は僅か全体 1/4 を占めるに過ぎなかった。これは既述したように百貨店・スーパー・小売からの参加激減を意味している。

 主催者側としても今回は、後半に2コマの専門性の高い講義(繊維構造、繊維方向性、水分特性、革とイミテーション材との特性対比)を設けたにも係わらず、一部の参加者から「もっと講義レベルを高めてほしい」という進言もあった。しかし、一方では講義内容をもっと易しくして欲しいとの意見もあった。今後は班別講習会の実現、資格制度を加味して検討していきたい。資格制度については、各界の専門家などの意見や要望を取り入れ、皮革人材育成計画図を作りたい。

 

3) 受講者の取扱い製品割合は?

 

 受講者の取扱う製品割合(図3)の内、最大は バッグ・財布(ほぼ同率 18% )分野で合わせて 36 %、ついで衣料 (12 % ) ・手袋 (9%) 分野で合わせて 21% 、 イミテーション材(合成・人工・繊維・プラ ステック、いわゆる雑材 )分野で 15 %、革及び 履物・家具分野 は 14.0 %の順であった。

 バッグ・財布分野並びに衣料・手袋分野 の 両者で 57 %占めた。これに イミテーション材分野を加えると 72 %となり、これら3分野が受講者の大半を占めたとことになる。この上位分野の企業は、偶然かもしれないが、 現在、国内皮革企業において活気を残す分野と言われる。一方、 履物・家具並びに革素材分野は、元々国内向け生産であり、現在では輸入品に押され、大打撃を被っている企業が大半である。その中でも今回、受講した履物・家具分野は、よく観察してみると、先の図1で既述したように 、ファッションセンスに溢れ、日本人にあった使い易さを追求した、数少ない優良企業からの参加が主であった。

 

A 受講した結果、仕事などの何に役立ち、何が期待できますか?

 

 受講し、何に役立ち、何が期待できるかの問いに対して、最も多かったのは「知識・情報が整理できる」が 38 %、ついで「今の仕事に多いにプラスになる」が 23 %、次に「開発・研究・営業の力になる」が 11 %、この3つの効果が全体の 72 %を占めた。すなわち、受講によって「頭が整理され、その結果、仕事にプラスに働き、力が発揮できそう」と感じたようである。さらに「仕事を見直すことができる」 10 %、ついで「技術レベルの向上につながる」 9 %、続いて「仕事に自信を与えてくれる」 7 %、最後に「事業の活性化に繋がる」 2 %と回答があった。

 現実は非常に厳しいのでいずれの回答も素直には受け取りたいが、何年か後に、どのような講義がどのように生かされたかを追跡調査を試みる必要がある。

 

B 受講後、1人あたり、何人に伝達・普及できますか?

 

表1 受講者1人あたりの伝達普及効果

伝達普及人数 ( 人 )

無回答

0

1

〜 10

〜 50

〜 100

〜 200

〜 400

〜 1000

回答者数 ( 人 )

17

3

8

43

3

2

1

1

2

80

延伝達普及最大人数 ( 人 )

0

0

8

430

150

200

200

400

2000

3,388

1人当り伝達普及数 ( 人 )

 

 

 

53.8

 

80 名回収 ( 無回答は他項目を回答していた人 )/ 受講者総計 130 名(回収率 62 %)

 

 講習会で得られた成果を何人位に伝達普及できるかの問いでは、成果を職場などで活用して普及できるとの回答(無回答を除き)が 95 %に達し、その内、 1 〜 10 人以内なら普及できるが 68 %と最大であった。順次、普及人数が増し、最高は 400 〜 1000 人以内なら普及できると2人が回答しており、回答数を延伝達普及最大人数で割ると、受講者1人当たりが最大で 53.8 人(但し、無回答を 0 人の普及とすると 42,4 人となる)を普及したことになる。

 これらの結果から今後を予測するなら、1人当り、地域差異はあるが、最大で 42 〜 53 人の成果普及が見込める。このように実現できるよう願いたい。

 

C 受講して、特に仕事に有用と感じ、または印象に残った講義内容はありますか?

 今回の講習会では、革・革製品に関する、 1. 環境特集、 2. 革・革製品に関する基礎・応用知識の体感特集、 3. 革特性を探る応用体感特集、の3テーマについて講義が行われた。その内、各講義において有用性を感じ、または印象に残った内容を示した。

 

1 環境特集の講義

1) 「最近の市場革に対する JES (日本エコレザー基準)の化学物質検査報告」 では、日本の市場革の 70 %くらいが JES に適合すること、また溶出6価クロムの検査では1点も検出しないことなど、特に日本革は安心であることへの印象を高めた。

2) 「国際化する革・革製品の環境ラベルの現状」 では、 EU を中心とする環境ラベルの認定企業の特徴、 DMF (フマル酸ジメチル)の EU 規制、エコレザーの定義、 LCA による CO2 排出量計算などに関心が向けられた。

 

2 革・革製品に関する基礎・応用知識の体感特集の講義

1) 「革の基礎知識、製革法・革種類・革の基本的見方」 では、 DVD の革造りの工程が印象的であった。また、 鞣しの意味、各種用途革に要求される要素(風合い、銀面、軽さ、染色堅ろう性、耐洗濯性、耐光性)が有用と感じた。また、各種革資料が多数陳列(写真1〜2)され、受講者各自が革の見方を学び、革の基礎として有用性と回答された。

2) 「革製品の取扱いと保管」 では、革特性から見た取扱い方、また用途から見た取扱い方、特に靴・バッグ・衣料・家具など具体的な手入れ法・保管法が有用性と回答された。

3) 「革製品の品質表示相談事例Q&A」 では、手袋における材料の種類の表示規程において、旧法では羊又はやぎの革は「羊革」であったが、 H22.9.1 に改正され、羊は羊革、やぎはやぎ革の表示に改正されたが、羊革でもヘアタイプとなると、やぎ革との差異を見出すことは難しくなり、正確な判別法を求める声に賛同したことが印象に残った。

 

3 革特性を探る応用体感特集 の講義

1) 「厚みと強度の関係」 では、銀面層と網状層(床革)に分割された資料が配布され、太く、交絡した繊維束を有する網状層において厚み、少なくとも成牛で 0.9mm 以上あれば、革強度を支えることを引裂き強さで体験、さらに衣料・袋物・靴など破れには裁断時の注意が重要であるクレーム事例を見て、高い有性を感じたとの回答が多数寄せられた。

2) 「熱特性・耐薬品性・水分特性」 ではし、特に熱アイロン時(写真3)の湿潤革の熱収縮変性実験で歓声があがり、興味を一点に集中させ、印象に残った。また、革塗膜の密着性実験では、セロテープ X カット法が紹介され、クレームとの関係を説明され、高い有用性を感じさせたとの回答が多く出された。

3) 「革繊維構造・繊維方向」 は、やや専門性が高く、理解不足が見られたが、断面構造の顕微鏡観察ではラミネート床革に興味が持たれ、新鮮な印象を与えた。

4) 「革とイミテーション材(合成皮革・人工皮革)の特性対比」 では、革定義の重要性、配布及び陳列した資料(写真4)に対する官能的見分け法に関心が向けられ、印象に残ったとの回答があった。

 

D 今回、あるいは今後の講習会に対して希望や意見がありますか?

1) 今回に対する意見

  @会場・案内・開催などについて

   •  会場は場所によって寒かった。

   •  受講料の支払方が複雑(無・有料、資料など)、もっと簡単にして欲しい。

   •  申込を先に、受講料は後に振込みにして欲しい。定員の確認は面倒である。

   •  少人数は聞きやすく、質問もしやすい。続行して欲しい。

   •  革造りの DVD 、図書の紹介・購入を受付で行って欲しい。

 

  A講義内容について

   •  内容が盛りだくさん過ぎるのでマトを絞ってほしい。

   •  専門的な部分もあり、業種別の講義をしてほしい。

   •  回覧資料には必ず説明を記入してほしい。回覧後方では何かわからない。

   •  スライドは全部テキストに書いて欲しい。

   •  受講後、小テストをして理解度を確認したらどうか。

 

2) 今後に対する希望

  @開催方法、会場、案内について

   •  土日開催できないか。

   •  スライドとテキストの順序を一緒にして欲しい。

 

  A講義内容について

   •  体感特集は続けて欲しい。危険な実験は VTR 、 DVD などで見せて欲しい。

   •  効率的な実験方法、受講者が疲れない方法など考えて欲しい。

   •  簡単な内容・実験よりもう少しレベルを上げ、実践的な内容にして欲しい。

   •  実験で革と雑材との関係を深く知りたい。コンビ製品の特徴を知りたい。

   •  具体的なクレーム事例や対処法、法令との関係などを知りたい。

   •  売場・消費者が求める講義法を考えて欲しい。

   •  革の仕上げ(塗装方法・種類、型押し、絞り、ツヤ加工など)知りたい。

   •  革に特化した内容にして欲しい。経年変化、染色堅ろう性なども知りたい。

   •  縫製上の問題点を知りたい。

   •  製品に合う加工法、仕上げ法、ケア法を知りたい。

 

 今回の講習会では、特に、実験を主体にした体感講習に注目が集まり、メーカー、アパレル、百貨店などの品質管理専門家、並び検査・試験機関の実務者などが総計 132 名参加された。厳しい意見もいただいたが、概ね全般の講義に有用性を認める回答があった。仕事に多いに役立ち、知識や体験を身近な人たちに伝達普及できるとの回答が多数見られた。その結果は、図5を ご参照いただきたい。

 

E まとめ

 本会が全国に向けて講習会を始め、毎回、 100 名以上の参加を重ねてきた。その間、時代は大きく変化し、市場では、輸入品・部分使い品の増大、他素材との競合、国際的な安全・環境基準の遵守など、目まぐるしく変化し、講習会テーマにおいてもその都度、書き換え対応してきた。

 今日では、情報過剰時代であり、単なる初心者向けの知識普及を繰り返すだけでは、受講者は満足しない。特に、国際化に対応した講習内容が望まれており、革・革製品特有のISO 基準、環境・安全基準、革特性の掘り起こし、新規革機能の付加など技術専門性を高め、革と他素材、並びに製品の仕上法、取扱い方など求められており、皮革業界全体に渡り、革に対する熱い期待を感じた。今後も希望される人材を育成するために試練を重ねたい。

 また、本会では、今後も専門書の編集・発行、国際学会での参加・発表、資格制度の確立、他分野とのコラボレーション促進、環境基準の数値化、全国での講習会開催を推進していきたい。

 

<参考> 講習会風景

写真1 東京会場での講義
写真2 横浜会場での講義
写真3 熱アイロン収縮実験 写真4 革・合成皮革・人工皮革の
点火マッチ落下実験
   
   
   以上 ,(mn)