研究報告
 
「非クロム鞣しに関する開発事業」の概要
 
 製革企業から排出するクロム鞣し廃液の処理が問題となり始めた。この対策として「クロム鞣し廃液の循環利用」が検討され、引き続きクロム鞣剤を使用し鞣し法が世界各国で研究されるようになった。
 本協会でも産学官の共同体制で、「非クロム系鞣剤の開発とその実用化試験事業」を多年にわたり検討してきた。各年度における事業内容の概要を記載する。
 
昭和57年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム系鞣製に関する基礎的研究)
  概要:省クロム鞣製の最近の動向調査(国内および海外)、省クロム、非クロムの基礎的研究として、クロム鞣剤添加量と革への吸着量、その革の特性を把握、クロム、グルタルアルデヒド、植物タンニン前鞣し革に対する各種再鞣処理と革の特性等について検討している。
 
昭和58年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム系鞣製に関する基礎的研究)
  概要:省クロム、非クロム革の海外動向調査を行った。クロム鞣剤削減による鞣製技術の基礎的な検討を行うとともに、アルミニウム、グルタルアルデヒド、クロム鞣剤、植物タンニン剤などの組み合わせによる鞣製方法を検討した結果、クロム革の特性に匹敵する革が得られることが確認された。
 
昭和59年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム系鞣製に関する基礎的研究)
  概要:クロム鞣し排水のクロム削減をはかるため、廃液の循環利用、残留クロムの再利用等に関する文献調査、クロム排水、クロム革の処理に関する海外調査の結果、クロム削減による鞣製技術の基礎的研究の研究、クロムの一部または全部を代替えする鞣製の基礎的研究(豚革、牛革)を行った結果を収録している。しかし、非クロム革の耐熱性に関する検討、生産コストの課題があった。
 
昭和60年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム系鞣製に関する基礎的研究)
  概要:非クロム系鞣製の条件設定として、省クロム系、非クロム系豚革に対して、クロム鞣剤、グルタルアルデヒド゙鞣剤、置換型芳香族合成鞣剤、アルミニウム鞣剤の組み合わせで標準的なクロム革に匹敵する革が得られた商法が検討されている。牛革でも同様な試験を行っており、その効果が検証された。ナッパ、アッパ、ヘビレタンタイプの非クロム鞣し条件の確立に向け検討し一つの目安が得られた。
 
昭和61年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム鞣製の実用化研究)
  概要:非クロム系鞣しの実用化を目指し、アルミニウム鞣剤の皮への結合特性、省クロム鞣製革の染色性、非クロム系革の特性解析から市場流通革の平均的な物性を把握した。非クロム系革を用いた靴の試作、着用試験を行った。着用試験後の外観評価がクロム革に近いものは、省クロム革、グルタアルデヒデ系非クロム革、タンニン系非クロム革の順位であった。
 
昭和62年度
○非クロム系鞣剤の開発事業(非クロム鞣製の実用化研究)
  概要:アルミニウム(Al)処理とフェノールスルフォン酸縮合物の反応について検討し非クロム鞣し鞣剤の開発に関する基本的な検討を行った。非クロム革の再鞣・染色・加脂特性を把握した。また、非クロム革、省クロム革の物性の特性把握と非クロム系革による革製品の試作を試みた。非クロム革はクロム革に比べ感触、耐水性、耐熱製の課題を検討する必要がある。
 
昭和63年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
  概要:鞣製排水中のBOD等を削減するため脱毛工程の改善として省硫化脱毛法の文献調査、サイロライム脱毛法、酵素による脱毛法に関する文献調査、回収毛の発生量、可溶化に関する文献調査を行った。省硫化脱毛法より得られた皮の豚ウエットホワイトから非クロム革の製造試験を行い、その特性を通常革と比較検討した。
 
平成元年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
  概要:ヘアセービング脱毛評価を行う弛緩状態の測定技術の開発、パチルス産生のアルカリプロテアーゼの脱毛効果、牛皮を対象としたサイロライム脱毛法とアルカリ安定化方式の省硫化脱毛法による毛の回収率の検討、水酸化カルシウム前処理によりNaHS量を削減できること、廃液の効果的なろ過、循環利用が可能なことを確認した。豚皮を用いた実用化試験も実施している。クロムを含む生のは廃棄物をクロストリジジウムと好気性菌で処理すると分子量1000以下のペプチドに加水分解されることを確認している。
 
平成2年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
  概要:アルカリプロテアーゼのコラーゲン溶解性、アルカリ前処理と脱毛石灰液の循環利用、酵素脱毛による省硫化脱毛法と排水中の汚濁量削減方法を検討している。ウエットホイワイト調整に対するアルミニウム鞣剤の挙動、特性、豚ウエットホワイトに対するクロム、植物タンニン再鞣革の特性把握、アルミニウム(Al)前鞣し革シェービング屑の脱アルミニウムとゼラチンの性状把握、革の縫製条件による機能特性の検討を行った。
 
平成3年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
  概要:酵素脱毛革は銀面の平滑性とシボがやや劣った。アルカリ前処理脱毛石灰漬け液の循環利用の可能性を見出した。非クロム鞣剤として塩基性塩化アルミニウムの特性把握、省硫化脱毛豚皮を用いクロム吸尽促進剤の効果を検討し排水中のクロム削減を図った。チタンーアルミニウム等による前鞣し革は銀面のしまりや平滑性を低下させた。その他副廃物の有効利用に関する検討、KESによる非クロム革等の材料学的計測の可能性を模索した。
 
平成4年度
○ 非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
 

概要: ウエットホワイトと省クロム鞣しに関する研究として、小牛皮で硫酸アルミークロム鞣しシステム、ウエットホワイトから脱アルミしてクロム鞣しの方法について検討し廃液中のクロム含有量を削減した。グルタルアルデヒドー植物タンニン鞣し革も良好であった。省硫化脱毛法によって得られた革のクロム含有量も多く、しかも排水中のクロム量を削減できた。副廃物に関する研究として、可食性コラーゲンケーシング作成の可能性を見出すとともにウエットホワイトの脱アルミによるゼラチンの製造について検討し酸化アルミニウム 0.02% 以下のゼラチンを得た。

 
平成5年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
 

概要: アルミニウム鞣剤の特性把握とウエットホワイトから各種製品革の調整法について検討したが、クロム鞣し革に比べると性状がやや劣る結果であった。特に吸水、吸湿特性などはクロム革より劣った。副廃物に関して床革から可溶化コラーゲンフイルムの試作、クロムを含むシェービング屑の脱クロム法を検討し、クロムを含まないゼラチンの生成の可能性を見出した。

 
平成6年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)
  概要:サイロライム脱毛で塩素ガスが発生しない脱毛法の可能性を見出した。ブレイヤ法による脱毛は可能であるが条件の再検討が必要であるなど確認された。植物タンニンとアルミニウムによる革の耐熱性の向上方法、硫酸アルミニウム革に対するクロム、アルミ、ジルコニウム、植物タンニン再鞣効果の検討、豚ウエットホワイトから非クロムヌバック革の実用的な製造試験等を行った。また、省・非クロム鞣し手袋革の特性把握を行っている。
 
平成7年度

○ 非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム鞣製技術の改善―準備作業を中心としてー)

  概要:炭酸ガス脱灰法の実用化試験の実施、回収毛のアルカリ分解物の特性把握、ジアルデヒド多糖類、アルミニウム、チタン、ホルムアルデヒドーアルミニウム鞣しの非クロム鞣しの検討、非クロム豚ライニングの製造試験、シープウエットホワイトからの手袋革の製造試験、合成樹脂による非クロム革の強化法、革くずの有効利用として生分解性プラスチックの可能性を検討した。
 
平成8年度

○ 非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)

 

概要: 炭酸ガスによる豚皮の脱灰法、回収毛の可溶化試験により新素材を作り出す可能性を見つけた。ジアルデヒド多糖類、チタン鞣しの特性を把握した。非クロム鞣し法による服飾用手袋革製造の可能性、無水珪酸コロイドの応用の可能性を把握した。廃棄物(タンパク質)の高度利用法の可能性を示唆した。

 
平成9年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)
 

概要:非クロム鞣製に対する準備作業の研究として、豚、牛皮に対する炭酸ガス脱灰法の検討、回収毛のタンパク質性状、ジアルデヒド多糖類、チタンによる非クロム鞣し技術、革の耐熱性向上に関する検討、プラズマ処理に革表面特性の改善法等を検討した。

 
平成10年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)
  概要:各種非クロム革の製造と革靴の製造試験、試験履きを行い園、その特性を把握した。アルミニウム革は銀浮きが目立つ、タンニン革は血筋が目立つ、タンニン・アルミは銀浮きが目立つ等を把握した。非クロム靴・鞄・手袋の試着試験を行い、今後の課題として採算性の問題、耐久性を検討する必要がある。その他鞣剤の探査研究を行った。
 
平成11年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)
  概要:非クロム靴用革の工場における製造試験とその特性把握、この試験革に紳士靴の製造試験、人体帯電性、臭い特性、微生物汚染等特性の把握、試履試験の結果のまとめ、非クロム服飾用手袋革の製造と特性を検討した。
 
平成12年度
○非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)
  概要:非クロム甲革(成牛 3 種、子牛 1 種、豚裏革)の製造試験とその特性(水、熱、耐光生)把握、紳士靴の製造試験と試験履き、非クロム革の場合は型崩れが多い傾向である。耐水性が悪い。生産コストの課題を検討する必要がある。非クロム革は耐熱性が低いので、製靴工程に留意する必要がある。非クロム革の帯電性を改良が必要であるが、耐微生物性はクロム革より良好。非クロム革の廃棄処分方法として炭化処理を試みた。正常に炭化処理は可能であった。
 
平成13年度
○ 非クロム系鞣製技術の開発実用化事業(非クロム系鞣製技術の開発研究)
  概要:非クロム系靴用革の製造とその特性、耐久性、非クロム系革から紳士靴製造技術と着用時における靴内気候の問題、使用済み非クロム系靴の廃棄処分として炭化試験、環境問題に対する意識調査を行った。