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「消費者に理解されるエコレザー基準の考え方」
 

平成 23 年2月 25 日  NPO 法人 日本皮革技術協会

 

「消費者に理解されるエコレザー基準の考え方」

 

本協会では 2001 年より本格的にエコレザーの開発研究を進め、 2006 年に日本エコレザー基準( JES )を提案した。この提案を受けて(財)日本環境協会は「カバン・スーツケース類」、 2007 年には「くつ・履物類」、 2010 年には「革衣料・革手袋・ベルト類」に「エコマーク」の認証を開始した。ほぼ同期の 2009 年には(社)日本皮革産業連合会においても JES の運用を開始し、「革」に対しては 107 点以上、革製品に対しては 44 点が認証され、今や世界に類を見ないエコレザー大国に成長している。

エコレザー製品は消費者のためにある。エコレザーは消費者を含めた利害関係者が一同集まり、討議を重ね、相互に納得のいく「環境や人体に優しい基準」を設定し、それにパスしたものである。表1に現状考えられているエコレザーの証明要件を示した。表1の (1) から (6) は多くのエコラベルの認定要件に採用され、審査がされているが、消費者の関心が強い (7) 、 (8) は個別製品には対応が遅れ、今後一層の討議が待たれている項目である。 (9) は、例えば靴一足当りのエネルギー消費量を示すもので本会では次年度から研究テーマに上げている。

本協会では革の特性を理解していただくため各地で講習会を行っている。エコレザーといえども基本的には革特性を発揮することが重要であり、長寿命性 (6) 、 (7) 、分かり易い取扱い情報 (8) の要望が次頁のアンケート結果に示されているので是非ご参照されたい。

表1 望ましいエコレザー製品に求められる証明要件及び取扱い要件

 証明要件及び取扱・普及要件

         具体的方法

(1) 原料皮供給証明書

肉の副産物である原料供給・納品書の提出

(2) 革顕微鏡断面写真

皮膚構造を有し、塗装膜厚み 150 μ以下を提示

(3) 環境法令遵守証明書

大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、有害物質の排出などに関連する環境法規及び公害防止協定など遵守宣言

(4) 有害物質検査証明書

第三者分析機関で残留農薬・ PCP 、発癌性芳香族アミン、発癌性染料、ホルムアルデヒド、六価クロムなどの重金属、臭気、染色摩擦堅牢度などの合格証明、新規物質、新基準

(5) 製法宣言

工程毎全使用薬名及び MSDS の提出

(6) 品質適合証明書

取引における品質検査書(国際基準、 JIS ・国家基準、 UNIDO ・輸入基準、団体基準、社内基準など)の提出

(7) 革取扱い情報冊子

長期使用体制のシステムが整っていることを証明することが求められる。それに合わせ製革・製品業者からの具体的取扱い文書の提出

(8) 健康への影響・製品情報の公開

法令基準、基準根拠、試験法、付属品(金属など)によるアレルギー、各種品質、取扱い、リサイクル・ 廃棄方法などの相談・冊子発行・公開講座

(9) 環境負荷削減の定量情報

製造時の LCA 評価、評価重み付け、環境影響の評価法

 

 

「皮革に関する基礎・応用・体感」九州地区講習会のアンケート結果

平成 22 年 10 月 18 日から 20 日までの3日間にわたり九州地区において「革・革製品の知識を習得する講習会」を福岡市内で開催した。開催に合わせ3人の講師が事前に執筆した 129 頁のテキストを使い、スライド・ビデオ・事例紹介・実験・実習を加えながら、革の素晴らしさを説いた。講習会に対する印象・期待・要望あるいは効果を把握するためにアンケートを実施した。また、講義の理解度、学習範囲、要望などを把握するために努めて質問の時間を設けた。あるいは聞き取り調査をした。これら得られた情報をまとめ講習会を総括した。なお、講習会の講義内容の概略は、本報告の第5項に略記した。また,講習会の経過は写真1〜3に示した。

 

1.アンケートによる受講者の特徴

先ずはアンケートに提供された情報をまとめた。講習会の受講内容は、革・革製品に関する「基礎知識」、「応用知識」、「物づくり体感特集」の3つのテーマを各講師が計9つのサブテーマを受け持った。アンケートは各自の受講最終日に回収箱の中に投函してもらった。

受講者数は、1日目コース(基礎知識)では 71 名、2日目コース(応用知識)では、 68 名、3日目コース(物づくり体感特集)では 46 名、延べ総数で 185 名であった。ただし、実質的な受講者総数は各コースの同一受講者を除いた 82 名であった。3日間におけるコース別受講割合は、3日間連続受講が約半数の 47.6 %、残り約半数は、2日間連続受講が 31.7 %、1日単独受講が 20.7 %であった。なお、アンケートの回収率は、表2欄外に示した。

受講者の出身は、福岡県 65.9 %、熊本県 12.2 %、佐賀県 7.3 %、鹿児島県 3.7 %、宮崎と大分県が各 2.4 %、その他(愛知県、京都府、大阪府、山口県)が各 1.2 %であった。九州全県からの参加は全体の 95.2 %を占めた。

 

1.1 受講者の業種割合

図1に示すように受講者の業種は、 クリーニング・修理業が 30 %と最大であった。次に百貨店・専門店の小売業が 23 %と続き、その次に製造・加工業が 20 %であった。この3業種が全体の約7割を占めた。残りの3割は4業種(卸問屋・商社、試験・検査・教育、クラフト、他 - 学生)が、それぞれほぼ同率(6〜8%)を示した。


図1 受講者の業種割合(%)

 

ここで1位のクリーニング・修理業の大半は、革製品の専業者ではなく、一般繊維製品の専業者と読み取れた。

これらの業種割合は、昨年平成 21 年度に東京・横浜で行ったアンケート結果とは様相がかなり違っていた。すなわち、東京・横浜では、製造・加工業がトップの 33 %であったが、九州地区では同業が 20 %とかなり低くかった。これは九州地区では東京のように大産地がないことから理解できる。また、東京・横浜では、3位の卸問屋・商社が3位の 15 %であったが、九州地区では5位の7%であった。これも九州地区では革・革製品の製造加工産地がほとんどないためと考えられる。同じく検査・試験・教育系も東京・横浜に比して九州地区では下位を示した。

今回の九州地区では、メンテナンス業(クリーニング・修理)が最大の参加者であった背景を考えて見た。東京・横浜地区では、既に革専門クリーニング・修理業が多数活躍し、革製品と一般繊維製品とは棲み分けが早くからできているが、九州地区では、革専業クリーニングの数も極めて少なく、また大手専業ホールセールの集配地域にも入らない地域も多く、同様に革製品と一般繊維クリーニングとの棲み分けや分業化が遅れていると考えられる。

2008 年の金融危機後、日本列島を覆った消費不況は地方都市にも大きく影響し、特に、一般繊維製品クリーニング業界の売り上げに対する落ち込みは大きく、 業界の先行き不安が拡がり、その解決策の一つとして革製品を取り上げることに目を向けた節がある。そもそも繊維製品は付加価値をつけるため革や毛皮を部分的に使うことが日常的になされてきた下地を持っていた。そのため 一般繊維製品クリーニング業界では、徐々に革知識を断片的に学ぶようになり、染色・塗装・取扱い技術の情報を少しずつ身に着け、技術的に簡単な革製品から手がけるようになったと思われる。また、消費者側からの視点からすれば 革 製品は 比較的高額であるため に 、この不景気を乗り切るために 買い控え、長期使用、使いまわしなどの消費行動が自ずと広まっていったものと思われる。その結果、一般クリーニング・修理業への依頼が増え、売り上げが伸びた。本会講習会の 評判は高く 、 系統的な革知識や製法技術の習得のチャンスを見逃さないために多数の受講者が集まったものと考えられる。 なぜなら 、 繊維クリーニング業界 は、研究熱心であり、多くの研究会が全国各地で活動しており、業界団体の結束も固く、後継者養成機関もあり、情報網がしっかりしているためことから理解できよう。

実際に、革製品の クリーニング・修理を実際に行うには、 革の特性を理解し、革の染色・塗装技術をマスターしなければならない。九州地区では、革の技術指導機関や製革業もなく、またかばんなど加工業も極めて少ないために確かな情報を獲得するのには相当の努力が必要であった。

革製品がクリーニンングや修理されることによって革製品はまた繰り返し使われ 、 製品寿命が長くなればなるほど、革への愛着は増し、革の素晴らしさを一層理解することになる。このことは長い目でみれば消費者に革を PR することになり 、 ひいては皮革産業を守り立ててくれる原動力となろう。

 

1.2 受講者の職種割合

受講者の職種割合(図2)の上位順に記すと、1位は営業・販売職 43 %、2位は 開発企画・研究・技術職 26 %、 3位は試験・検査・品質管理職 14 %、 4 位は指導管理・教育職9%、 5 位は他(学生のみであった)8%であった。

図2の2位・3位を 合わせて 40 %であったが、両者 は一般に 技術系職種であり、昨年度の東京・横浜における両者の結果と比較すると、東京・横浜では 68 %を示し、九州地区では 40 %と少なかった。 5 位は専門学校学生であった。全体とした非常に幅広い職種からの参加が認められた。もっとも従来から、多彩な職種や業種の応募があった。これは幅広い分野に革を知って欲しいために案内を送付しているからである。各種の専門性を持った受講者が参加することによって講義の質を高め、受講者の裾野も広まる効果がある。すなわち、それぞれの分野ごとに講義に対する期待感も異なり、また受け止め方・見方・考え方も異なるので、質問や対話は一層面白くなるメリットはある。しかし、毎年、分野別講習会の開催希望の意見が出て困ることもある。


図2  受講者の職種割合 ( % )

1.3 受講者の主な取扱い製品の割合


図3 受講者の主な取扱い製品割合 ( % )

図3に示すように受講者が主に取扱う製品は、 1位は履物・靴 32 %、 2位は バッグ・鞄・財布 31 %、3位は手袋・衣料 20% 、 4 位は革、 5 位は イミテーション材(合成・人工・繊維・プラ ステック、いわゆる雑材 )、6位は家具・インテリア の順であった。 1 位及び2位を合わせて 63 %を占めた。なお、図1で見たように一般クリーニング業の参加が多かったにもかかわらず実際には手袋・衣料の取扱いは3位にとどまった。これは、最近一般繊維クリーニングにおいては、革部分使い繊維製品の依頼もかなりあるとの情報から、手袋・衣料よりもバッグ類の取扱い数が多くなっているものと思われる。

 

 

2.アンケートによる受講結果への期待感と有用性

受講した結果、仕事などの何に役立ち、何が期待できますかの問いに対して最も多かったのは「知識・情報が整理できる」が 25 %、ついで「今の仕事に多いにプラスになる」が 22 %、この2つの回答が全体の約 50 %を占めた。すなわち、受講によって「頭が整理され、今の仕事にプラスに働く」と期待したようである。一層高い期待感を抱いたのは「技術レベルを高め」 (14 % ) 、「開発・研究や営業に力を発揮」( 13 %)できると、あるいはやや消極的であるが「仕事を見直しに有効」( 11 %)、「仕事に自信を持つ」(8%)が回答している。もっと大きな期待感を抱けば「事業の活性化にも役立つ」


図4 受講による仕事への期待感の割合(%)

(6%)と回答していた。その他の意見として、「クリーニングの事故防止に役立ち」、「合成皮革・人工皮革の見分け方のコツが掴めたので今後の営業に大きな力を発揮できそう」の回答も見られた。

これらの内容を昨年 H21 年度東京・横浜地区のアンケート結果と対比すると、全体の順位や傾向は類似していた。特に、1位「知識・情報が整理できる」と2位「今の仕事に多いにプラスになる」の順位は、九州と全く同じであり、受講上位メリットには地域差や業種差などの影響は少ないようである。すなわち、本会の講習会を受講すれば、「今の仕事にプラスになるばかりか、開発・研究・営業の力になり、技術レベルを高める」ことを期待できそうである。今後も同じような設問を各地で行い、また同一地区での開催を繰り返し、実際にそのような効果を発揮できるかを検証する必要もある。

 

 

3.アンケートによる受講後の1人当りの最大普及伝達人数の予測

表2 受講者1人あたりの最大普及伝達予想効果

普及伝達数 ( 人 )

1

〜 10

〜 50

〜 100

〜 200

〜 1000

回答数 ( 人 )

4

37

9

3

1

5

59

回答数の占める割合 ( % )

6.8

62.7

15.3

5.1

1.7

8.5

-

延普及伝達数 ( 人 )

4

370

450

300

200

5,000

6,324

1 人当りの普及伝達数 ( 人 )

107

各日(3日間)における同一受講者を除く受講者総数 82 名(アンケートの回収率 71.9 %)
但し、期間中の受講延べ総数は 185 名であった

 

表2で示すように講習会で得られた成果を何人位に普及伝達できるかの問いに、回答者全員が1人以上普及できると答えた。普及伝達数の回答がもっとも多かったのは「〜 10 」であったが、本項では「〜 10 」を「1人で最大 10 人を普及できる」と解釈した。この時の回答は 37 人(全体の約 63 %)であったので延普及伝達数は最大で 370 人となった。同様に普及伝達数の「〜 1,000 」は「1人で最大 1,000 人を普及できる」と解釈して、この時の回答は5人(約 8.5 %)であったので延普及伝達数は最大で 5,000 人となった。このように計算すると、延普及伝達数は回答数が 59 人であることから、その総計は 6,324 人となった。それゆえ、受講者1人当りの普及伝達数は最大で 107 人が望めると予測した。ここで回収率は 71.9 %であったので実際には 21.1 %の受講者の普及数は読みとれない。そこで、仮に 21.9 %の受講者全員が誰1人も普及伝達できないと想定すると、1人当り少なくとも約 77 人( 107 人× 0.719 = 76.9 人)は普及伝達できることになる。勿論、普及伝達数は受講者の業種、職種、階層、地域によって異なると想定されるので今後、さらに詳しく解析を続ける必要がある。

昨年度実施した東京・横浜と今回九州地区と対比すると、受講者1人当りの普及伝達数は、東京・横浜が約 54 人(今年度と同様の計算結果)、九州地区が約 107 人となるので今回の九州地区の方がほぼ倍の普及伝達効果があったと予測した。

 

 

4.アンケートから見られる各講義内容に対する有用性または印象度

今回の講習会では、革・革製品に関する、「基礎知識」、「応用知識」、「物づくり体感特集」の3つのテーマを9つのサブテーマ(本文の下線部分)に分け、3人の講師によって講義が行われた。受講後、各講義内容に対する有用性及び印象度をアンケートで回答してもらった。その結果をまとめた。

 

4.1 基礎知識の講義

初日には、3つのサブテーマの講義を行った。その内、 「苦情事例と対策」の講義で は、苦情事例を染色堅牢度と強度の2点に絞り、それらの特性・種類・要因・テスト方法を順に説明し、後半に個別実習を行い、非常に分りやすく、納得できる講義であり印象度や有用性も最も多くの回答が寄せられた。次に、 「なめしの意味、革のできるまで、革の種類、エコレザーの特徴」 の講義では、革の基礎知識の根源に触れる内容、例えば、鞣しとは何かをなど革の本質を掴むことができ、有用性を強く感じたとの回答が見られた。もう一つ 「革の素晴らしさを探る」の講義 では、革の基本特性である構造・熱・水分の各特性を取り上げ、詳しく説明がなされたが、専門用語が多く、難しく感じたようであった。そのため印象度は低かった。しかし、靴関係者など実務者からは、革の品質限界や人工皮革との評価事例の項では有用性との回答もあった。

 

4.2 応用知識の講義

2日目では、基礎知識をある程度身につけた人を対象に企画された。講義や事例紹介・実験などを通して3つのサブテーマが説明された。その内、 「革・革製品の取扱い方と事故事例」の講義 は、特に、熱特性の説明では、各自が湿潤革に熱アイロンを掛けたところ、スルメのように縮む革を見て驚きの声が上がり、革の取扱い方を楽しく学べたとの回答が多く寄せられた。また、塗膜剥離の説明では、セロテープ X カット法に高い関心が示され、印象度・有用性に対する回答も多く見られた。次に、 「革の見方からイミテーション材を対比」の講義 は、最近の製品事情の影響もあって合成材との判別法に高い関心が示された。特に、革は網状層部分の太く緻密な繊維が絡み合い、強度や強熱透過性が極めて優れることが説明され、この点を実験で合成材と対比したところ歓声が上がり、印象・有用性の回答もかなり見られた。もう一つ 「動物・なめし・仕上げ・用途の異なる革の判別法」の講義 は、革の見方の基本が示され、特に、革の部位、動物の種類と構造の差異の顕微鏡観察では、幅広い業種で有用性の回答が見られた。

 

4.3 「革の出会いと物づくり体感特集」の講義と実習

3日目では、主に学生や主婦あるいは皮革以外の他業種を対象に3つのサブテーマを用意した。系統的・論理的な説明を最小限にし、革の素晴らしさを前面に出し、楽しく体験できる特別なコースを設定した。先ずは、革に興味を持っていただくために動機づけとして 「革との出会い@革の歴史・文化」 からスタートし、日本の伝統革が取り上げられた。特に、姫路白なめし革や印伝革は、明治初期において日本における産業の一つの礎となり、工芸・文化に大きな足跡を残し、今日の皮革産業の発展にも寄与していことが述べられた。このような歴史教育をもっと多くの人たちに聞いてもらうことが必要ではないかとの回答も見られた。基礎・応用編を締め括りとして 「革との出会A革特性と取扱い方」の講義 があり、染色堅牢度における染料・塗装の役割、クリーニング溶剤・同乾燥法の問題点、苦情事例などの実物紹介・小実験などによる説明があった。各種苦情事例では、クリーニング業界から有用性が高いのでもっと広く公表して欲しいとの声もいただいた。最終学習として 「革小物の試作実習」 を行った。ヌメ革の可塑性を生かし、染色を行い、造形物(ペンケースなど)に仕立て、製品づくりの一旦を体験し、革の素晴らしさを体得してもらった。実習を通して下記のような多くの感想・感動が寄せられた。

「革小物の試作実習」に対する感想と感動
  「とにかく楽しく革と向き合えた」、「子供も大人も一緒に楽しむことができ、出来た作品はなぜか紙・繊維・粘土などと違い、強い愛着を感じ、身近に置き、いつも触りたい気持ちとなった」、「革は簡単に染色でき、粘土のように簡単に造形でき、楽しかった」、「革は生き物のようであった」、「革は水と友達関係にあると思った」、「革は丈夫で暖かく、親しみを感じ、革が生きていると思った」、「物づくり中、最後まで喜びと楽しみを与えてくれた革と講習会に対して感謝したい気持ちになった」など多くの感想をいただいた。また、感想の中に毎年このような講習会を九州地区で実施して欲しいとの要望も多数見られた。

 

 

5.アンケートに見られた講習会への要望

5.1 今回の講義方法などに対する意見

1) 案内や申込方法の統一

他の会員制の講習会では、 HP だけで申込ができるが、今回では、申込・通知はファックス、電話、メール、ハガキなどの多数の方法が採用され、どの方法がよいのか迷った。申込をしても不安になり、結局は全ての手段を使い確認した。非常に親切であるが、無駄も多いのではないでしょうか。改善は可能でしょうか。

2) 会場設定などの改善

説明が早くて聞き取れなかった講義もあった。マイクの調整・時間設定などを改善

して欲しい。また、会場の温度調節が悪く、眠くなった。空調に気をつけて欲しい。

3) 講義への工夫

70 〜 80 人の実験・実習あるいはスライド・事例紹介では前列の人が邪魔となり、良く見えなかった。少人数で行うか、前列に惑わされない階段教室の利用かなど考えて欲しい。また、全員が並んで順番に行う実験では、効率が悪く、貴重な時間が無駄になるので少人数による方法などを考えて欲しい。

4) 主催者側に感謝

全体的にとても分かり易い講義・実習であった(多数の意見があった)。よく吟味された講習会であった。中でも「苦情事例と対策」の説明はとても分りやすかった。単純化できない講義内容もあるので一概には言えないが、応用編などの講義にこの手法を採用できないか。

 

5.2 今後の講義内容などに対する要望

1) 九州での開催要望

ここでも九州での毎年開催の希望が多数あった。

2) テーマへの要望

@ 革製品の苦情事例(対策・防止策も含め)は、各講師からもあったが、もっと詳しく、系統的で、各分野の方から多くの事例を学びたい。例えば、百貨店・消費生活センターなどのコンサルタントによる苦情事例の話が聞きたい。

A クレームの最大項目である染色堅牢度について系統的に学びたい。特集を組んで欲しい。

B 染料特性と素材特性の関係を詳しく知りたい。

C 爬虫類革の染色・塗装技術について知りたい。品質を高めればもっと売り上げを伸ばせるので業界人は真剣に考えて欲しい。

D 革・革製品の手入方法、ビフォーケア、アフターケア、修理方法などの技術的課題について学びたい。

E 風合いの良い革の見分け方、製法と風合いとの関係などを知りたい。

F 世界に通用する製品工場の活躍や特徴につての話しを聞きたい。また、そのような有名製品工場の見学会を実施して欲しい。

 

 

6.講師が講習会開催中に直接受けた質問や各種要望 

3日間の講習会中で3講師が受けた質問や要望は、記憶しているものだけでも 53 事項あった。それらを技術的なものと、それ以外のものに分けて掲げた。同一内容はまとめて一つにするなどして 33 事項にまとめた。なお、回答はその場で即答した(大半はテキストに説明されている)のでここでは質問内容の主旨のみ記した。なお、アンケートと同じような要望・質問も見られたが、どれも重要と考え、ここにできるだけ掲げた。

 

A. 講師が直接受けた技術的な質問や要望

6.1 爬虫類革製品に対する技術改善の要望

@ 爬虫類革製品を取り扱っているが、ここ近年、耐光性の弱い革が増えている。これはなめし・染色に原因があるのか。改善はできないのか。

A 九州では爬虫類革品がとても好まれている。しかし、取扱いやメンテナンスの技術情報が少なく、折角売れてもアフターケアの技術がないために爬虫類革製品の品質評価が毎年下落し、お客は減少傾向にある。このような問題に対応した技術講習会を九州でぜひ開催して欲しい。

B 爬虫類革の仕上げ技術が中々改良されないのは残念である。例えば、使っていると、1年もたたない内に粘着が生じ、手垢が着きやすく、黒くなったりして、2年くらいで使えなくなる。最近では、爬虫類革だからという説明では消費者は納得しない。 15 年前の方が染色・塗装技術は優れていた。現在の技術では本当に改善できないのか。

 

6.2 革・革製品の臭気・カビ発生・除去・保管方法

@ 爬虫類革の臭気発生原因は何か。牛革などと異なる臭いだが、原因物質は何か。

A 輸入爬虫類革品の悪臭で困っている。除去法があれば知りたい。特に、イタリアから仕入れた爬虫類革品は非常に臭く、売り場全体で迷惑がられ大変困っている。何が原因か。イタリア人は気にならないのか。今後、イタリアなど海外から仕入れる場合の臭気対策はどのようにしたらよいのか。このような失敗を繰り返さないように、現地で簡易的に試験する方法はあるのか。

B 人工皮革や合成皮革製品にわざわざ天然皮革製品のような臭気を故意につけ、消費者を惑わすような製品があると聞く、このような臭気物質は何か。入手先を知りたい。

C 革と合成・人工皮革との臭気発生を比べると、革の方がより臭気が強いと専門書には載っているが、実際には合成・人工皮革の方が激しい臭気がする。合成品だからか止むを得えないのか。臭気が強いのはなぜか。どのような臭気物質が原因か。文献はあるのか。改善はできないのか。

D かばんの修理業であるが、具体的な消臭・防臭方法を知りたい。塗装仕上げが臭気の直接原因になることはあるのか。その場合の対策方法を知りたい。

E 革の臭気は自動車業界では、加脂剤や塗装剤からの VOC ( 揮発性有機化合物) が問題と聞くが、無塗装の植物タンニン鞣し革では加脂剤のみが主要因物質と考えてよいか。

F 輸入し、日本への輸送時のかび対策は、具体的どうしたらよいか。

G 革製品の保管時の対応について、虫干しはかび対策に有効か。

H かびの取り除き方はどうしたらよいか。その臭いの除去方法は。

I オゾン処理は臭気除去に効果があるのか。その使い方は。

 

6.3 変色・変退色の原因・塗装の問題

1) 接着剤の移行による変色・染色堅牢度の影響

@ 接着剤のしみ出しで革衣料が濃色化するのはどうしてか。

A 接着色テープの移行は変色だけが問題となるのか。染色堅ろう度にも影響するのか。白色テープなら両者とも大丈夫なのか、黒色テープではだめなのか、または接着テープそのものに問題があるのか。

B クリーニング後の接着剤の移行による濃色化は、使用量に問題があるのか、接着剤の種類・タイプに問題があるのか。

 

2) ブロンズ現象による変色

@ どのような染料が起こりやすいのか。塩基性染料に問題があるのか。

A ブロンズ調仕上げの原理は、苦情品のブロンズ現象を利用したものか。

B サンドイッチ染色はブロンズ現象との関係があるのか。

 

3) タンニンと鞣し剤、または金属による変色・光による変退色

@ タンニンは、鉄以外の金属と反応するのか。

A 店頭に展示中に革製品の変退色が生じることがある。原因は。改善策はあるのか。

4) 塗装の問題点(仕上げ膜の密着性、粘着性、塗膜)、床革やエナメル革の製法

@ 塗膜と革との密着性をセロテープ剥離試験で判定する場合、合格点は何点か。

A PU 塗膜の加水分解による経時劣化は、水の影響が及ぶ革の表面層のみと考えてよいのか。

B ラミネート床革はラミネート膜を直接床に接着するのか。

C ラミネートエナメル革と塗装エナメル革との判別法はあるのか。

 

5) 革とイミテーション材の判別

@ 合成皮革で吸水性が革より優れたものがあるが、どんな素材が使用されているのか。

A 合成皮革は、革以上に触感で温かさを感じたが、それは素材の化学特性によるのか、組織構造によるのか。

B ラミネート牛床革は千枚通しでラミネート側から突き刺しても通らないのはなぜなのか。

C 合成・人工皮革の判別法において裏の不織布の有無で判別ができるか。

 

6) 破損・強度・硬化・変性・アレルギー問題

@ 牛革を薄く漉き過ぎると強度低下を招くことが理解できたが、牛以外の馬、豚、羊などでも同じ問題が起きるのか。

A 熱アイロンの実験では、白鞣し革の収縮を体験したが、クロム革ではどうか。

B 塩化カルシウム除湿剤による革の変性には気をつけたいが、問題がない除湿剤もあると思うが、それらを紹介してほしい。

C 革製品で関係する接触皮膚炎のアレルゲン物質は、例えば、腕時計なら、主に金属ベルトの溶出ニッケルやある種の接着剤などから溶出するホルムアルデヒドと言われており、重クロム酸塩(六価クロム)やある種のアミン系染料などは日本の革では使用されていないと聞いたが、もし安心・安全ならもっと PR して欲しい。

 

B. 講師が直接受けた各種要望や業界の発展を願う意見

6.4 各種要望(講習会開催や革の提供)

@ 次回、九州地区で同様の講習会をぜひ開催し欲しい。いつ頃、開催予定か。この講習を受けるのと受けないのとでは、雲泥の差が発生する。目から鱗のような事例をたくさん聞くことができた。東京、大阪に行けばこのような情報取得は容易かもしれないが、時間・費用の問題もあり、中々遠くまで出かけられない。情報が少ない地域のことをもっと理解して今後も引き続き九州地区で定期的にこのような講習を行って欲しい。

A 使いたくても革が手に入らない。最近の学生(専門学校)は革に非常に興味がある。作品を作りたい希望者が多いが、地方では思った素材が手に入らない、また学生にとって革は高価すぎる。革素材を無償で提供いただける協会や発表会の場があったら、教えて欲しい。学生達に人気がある素材をもっと広めたい。学生は海外での発表の場も興味を持っている。学生の交流の場、相談できる案内所があったらよい。ぜひ教えてください。

 

6.5 業界の発展を願う意見

@ 自動車業界がもっと皮革業界をリードしてほしい。現実には問屋任せのメーカーが多いと聞く。このような講習会に積極的に参加するように促して欲しい。

A 日本の製革業が海外に比べて優れている点は何かをご教示願いたい。これからも日本の革を使ってかばん・靴を造っていきたい。

B 日本の革を使って製品づくりをしたい。もし、鞣し剤等の輸入がストップしたらどうなるのか。日本では革製造できなくなることはないか。鞣し剤は特定の国の輸入に頼っているのか。クロム剤・合成タンニン・植物タンニン・染料・顔料は日本の窓口はどこか。偏りはあるのか。ご教示願いたい。

 

6.6 その他の質問

@ 革製品を販売しているが、今回の講習会を通じ品質検査の重要性を十分認識できた。事前検査から進めていきたいので用途別試験項目を教示願いたい。

A 革製品について「消費側の目線、百貨店側の目線、メーカー(靴、鞄、自動車)の目線」について述べた資料(論文など)があったら、ご教示下さい。

B 流通におけるクレーム発生要因をまとめた資料がほしい。ご教示下さい。

 

7.まとめ

今回の講習会は、革・革製品の販売促進、開発技術研究、品質向上を目指し、革・革製品の知識を習得し、革の素晴らしさを知ってもらうために九州地区を代表する福岡市内において3日間開催した。 

受講総数は 185 名、その 95 %が 九州全県から参加した。 業種は幅広く、多い順に記すと、 クリーニング・修理業、百貨店・専門店、製造・加工の3業種が全体の約7割を占め、その他として卸問屋・商社、試験・検査・教育機関、クラフト・薬剤であった。職種も 多い順に記すと、営業・販売職、 開発企画・研究・技術職、 試験・検査・品質管理職、指導管理・教育職、他(学生のみ)であった。 受講者の取扱う製品の内、 最も多かったのは九州地区の唯一の産品といってよい履物・靴であった。その他、最近はオリジナル製品としてのバッグ・鞄・財布も僅か見られた。これに次ぐものとして多い順に記すと、手袋・衣料、革材、製品雑材(合成人工皮革・繊維・プラステック・接着剤・油剤)、家具・インテリアであった。

アンケートから講義の印象や有用性を調査したところ、受講して何に役立ち、何に期待できるかの問いに対しては、「知識・情報が整理できる」と「今の仕事に多いにプラスになる」の2つが全体の 50 %を占め、「開発・研究や営業に力を発揮」、「技術レベルを高め」、「事業の活性化にも役立つ」の3つが全体の 33 %を占めた。受講により頭の整理ができ、仕事へのプラス効果があるだけではなく、力を発揮し、一段とレベルを上げ、活性化できるとの回答があった。また受講によって何人の人に伝達・普及できるかの問いでは、1人当り最大で 107 人に普及できるとの回答があり、昨年度東京・横浜( 54 人)の開催に比べ倍近くの効果を示し、受講に対する期待感は大きかった。

開催中に一番多い要望は今後も九州地区で同様の講習会を開催して欲しいというものであった。情報過剰時代に九州は相変わらず皮革情報過疎地であるといい、特に革製品の手入・取扱い方法、クレーム問題、革製品のアフターケア、爬虫類革の染色・塗装改善などの知識が不足しており、全くの手探り状態で消費者に迷惑を掛けている。いつまでも革だからとの理由では消費者は納得しなくなっている。今回のような講習を受けるのと受けないのでは雲泥の差が発生する。目から鱗のような事例を今回たくさん聞くことができたので次回の開催をぜひ期待したい。もう一つこれからは個の時代であり、九州でも靴やバッグのオリジナル製品が出始めている。安心・安全な革を使うことが前提となり、信頼できる革造りが求められるのでぜひ日本で革製造を続けてほしいこと、また最近は地方でも専門学校の学生がたくさん育っており革を使いたい要望が増えている。しかし、地方では中々希望の革が手に入らないので困っていることを業界は知ってほしいとの要望もだされた。

アンケートの結果から、今回の 129 ページのテキストは、受講者の今後の仕事に役に立ち、さらに広く人材育成の普及にも役立つことを確信した。また、講習会でいただいた多くの要望や教訓を今後の講習会事業に反映させ、革の素晴らしさを学び、革・革製品に愛着を持ち、ひいては革製品の需要を増大させ、品質向上に生かしたい。

なお、ご意見などございましたら 当法人にお寄せ下さい。