革の一般的な性質
   
    1) 革の長所と短所
      革が他の素材と比べ優れている点(長所)
     
  • 銀面模様の美しさ、優れた感触。
  • 保温性があり、暖かい感じ。
  • 吸湿性に優れている。
  • 気温による風合いの変化が少ない。
  • 適度な塑性と弾性をもつので、成形性がよく体や手足になじみやすい。
  • 切り口は裂けにくく、ほころびない。
  • 燃えにくい。
       
      革が他の素材と比べ取り扱いにくい点(短所)
     
  • 個体差、部位差があり、感触、色、風合いなどが不均一である。部位を考慮した色合わせや裁断が必要である。不定形であり、大きな面積や均質なものがとれないため裁断率が悪い。
  • 水に濡れると形状や風合いが変化する。
  • 染色堅牢性が比較的弱い。
  • カビが生えやすい。
  • 濡れたとき熱に弱い。
  • アルカリ性に弱い。
  • 特有の臭い(主にタンニン、加脂剤、仕上げ剤等)を有する場合がある。
       
    2) 一般的な化学組成
       製造工程でコラーゲン以外のタンパク質は除去される。これに鞣剤、染料、加脂剤が付加され、革表面に仕上げ剤が塗布される。鞣しの方法等により革の化学組成は異なるが、一般的な化学組成を以下に示す。
革の一般的な化学組成(一例)
  甲革 裏革 中底革 底革 ヌメ革 衣料革
子牛 成牛 成牛 成牛 成牛 成牛 子牛
鞣しの種類 クロム クロム・
タンニン
クロム タンニン タンニン タンニン クロム クロム クロム
全灰分 5.9 4.1 4.2 0.5 1.8 0.3 6.5 6.5 6.5
皮質分 72.2 60.7 58.9 38.3 34.1 50.9 65.4 70.2 64.2
脂肪分 4.0 6.8 8.5 4.8 4.2 7.5 12.1 8.8 10.1
タンニン分       27.1 28.3 27.6      
クロム分 4.7 3.0 2.8       5.0 3.7 4.9
pH 3.7 3.2 3.5 3.4 3.2 3.5 3.8 4.3 4.0
       
    3) 一般的な機械的特性
      革の機械的特性は厚さを基本として引張強さ、引裂強さ、切断時伸び、7kg荷重時の伸び、銀面割れ高さ、荷重、屈曲性等々がある。革の厚さは薄くすることができても厚くすることはできないため、JIS規格でも動物の種類ごとに示されている。一般的な機械的性質を以下に示す。
革の一般的な機械的性質(一例)
  一般甲革 ソフト調革 ナッパ革 ガラス張り ベロア
厚さ(mm) 1.5 1.8 1.2 1.8 1.6
引張強さ(MPa) 21.6 20.2 18.0 19.4 15.2
切断時の伸び(%) 57.0 62.0 77.0 48.0 72.0
引裂強さ(N/mm) 38.0 31.0 30.4 42.8 30.1
銀面割れ時荷重(N) 283.4 250.1 209.9 259.9  
銀面割れ時の高さ(mm) 9.7 9.8 10.0 9.8  
見かけ比重(g/cm3) 0.7 0.7 0.6 0.7 0.5;
熱収縮温度(℃) 96.0 95.0 94.0 96.0 98.0
耐水度(min.) 57.0 24.0 29.0 58.0 10.0
吸水度(%)30分間 42.0 41.0 39.0 39.0 61.0
吸水度(%)24時間 65.0 64.0 65.0 60.0 84.0
吸湿度(mg/cm3) 29.0 27.0 26.0 26.0 24.0
透湿度(mg/cm2/hr) 9.4 14.4 9.8 7.8 13.4
       
    4) 動物皮の線維の流れ子牛皮の繊維方向
       動物の繊維の流れは本質的にほぼ決定されている。また、皮の部位によって繊維の密度に大きな差がある。例え ば、背部や尻部では密度が高く、腹部や脇部では密度が粗く強度も弱い。
 動物の種類、年齢、性別などのよっても大きく異なる。更に、鞣し方法、柔軟さを付加するために行う機械的な操作等によっても影響を受け、革の機械的特性に変化をもたらすが、一般的に革繊維の流れに垂直の方向では、引張強さは小さく伸びやすい。反対に流れに平行の方向では引張強さは大きく伸びにくくなる。

子牛皮の繊維方向
       
    5) 吸水性
       コラーゲン繊維自身は高親水性である。鞣し剤や加脂剤も親水性のものが多いため、合成繊維に比べて革は圧倒的に多くの水を吸水する。靴用革の吸水度の一例を示す。
牛革でも成牛革よりも子牛革の方が吸水性は高い。この吸水性は仕上げ方法、鞣し方法などにより大きく異なる。また、鞣し工程や仕上げ工程で行う防水処理、撥水処理によっても大きく異なる。さらに、腹部の繊維構造が荒い部分は吸水性が高く、緻密な部分は吸水性が低い。  吸水性は革の耐水性や吸湿性などとも大きく関係し、革製品の特性に大きく影響する要素である。

靴用革の吸水度(%)(一例)
  30分後 24時間後
ボックスカーフ 47 88
カーフスエード 48 85
成牛ボックス革 37 72
成牛ソフト革 47 75
ガラス張り革 41 68
中底 タンニン革 49 55
中底 クロム革 25 54
中底 レザーボード 19 43
底革 16 27
       
    6) 吸放湿性
       コラーゲン繊維中の水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの親水性基が分子を引き付け、分子間で水分の受け渡しが行われ、また、繊維間で毛管現象があり良好な吸放湿性特性を有している。このように革が湿度の変化によって水分を吸収したり放湿したりする現象を「革は呼吸する」とたとえ、革のもっとも大きな特徴である。水分が多くなると伸びやすく強度も増加するが、多少の面積変化も生じる。


革の吸放湿特性



靴用革の吸水度(%)(一例)
革素材 吸湿度(mg/cm3) 革素材 吸湿度(mg/cm3)
成牛革 28 豚ヌバック革 33
カーフ革 31 豚スエード革 36
カーフスエード革 31 羊スエード革 20
牛底革 23 羊銀付き革 28
成牛ナッパ革 30 山羊銀付き革 24
       
       
    7) 熱的特性
       皮の耐熱度は動物皮によって異なるが、鞣しを行うことによって革の耐熱性は上昇する。しかし、鞣し剤の種類、鞣しの程度により異なってくる。  一般的にクロム鞣し革は77〜120℃、植物タンニン革は70〜89℃、ホルムアルデヒド鞣し革は63〜73℃、油鞣し革は50〜65℃、これらの耐熱温度は湿潤状態で測定されたものであり、乾熱状態では耐熱度は高くなる。

生皮や革の耐熱性
皮革の種類 耐熱性(熱収縮温度)℃
生皮 カーフ 63〜65
成 牛 65〜67
53〜62
魚(寒帯に生息) 33〜52
魚(暖帯に生息) 49〜58
鞣した牛革 クロム 77〜120
ジルコニウム 75〜97
植物タンニン 70〜89
アルミニウム 75〜85
グルタルアルデヒド 65〜80
ホルムアルデヒド 63〜73
魚油(油鞣し) 50〜65